タクシーで、目的地まであと、5分。届いたメールに返信して時間を有効活用しよう。あと、2分。まだ時間はある。何をしようか。ロボット掃除機を購入したいから、どのロボット掃除機が正解か調べよう。損はしたくない。
私は、日本を旅しながら、世界中の企業や市区町村にいるエンジニアの手助けをする仕事をしてきました。忙しい毎日の中で、仕事の効率化や最適解を常に求めてきました。無駄の排除と時短によって、仕事はうまく回るようになりました。
「その時間に、意味はあるか」
その価値観を常に頭に置きながら、物事の選択をしてきました。しかし、そんな行動の連続によって、ダラダラができなくなっている自分に気づいたのです。何事にも意味を求め、効率化や時短、ミニマリズムの過度な価値観が、心と身体のオンとオフが難しくしていました。
呼吸が浅く、疲れがとれない。
夜は、眠りにくい。
そんな時期に、仕事の合間を縫って帰省した際、
「窓からの光に照らされ、空間を移ろう何か」に目を奪われました。雲のような、糸のような、海月のような。
絶えず繊細に、姿を変えながら、移ろいます。
次に、ふわっと、心が静まるような、花の香り。
それは、私が小学生の時に天国へ旅立った祖父に、祖母が毎日欠かさずにあげてきた、お香でした。幼い頃から見ている何気ない景色。お香の煙、子供のころも、好きだったなぁ。と素直に思いました。旅先で早速、お香を焚いてみます。ふわっとお香の香りが届き、煙が空間を移ろいます。
ふと、ダラダラできる自分に気づきました。繊細な煙自体が美しいので、何もしない意味のない時間を許すことができます。焚火のような、流れ星のような、この美しい自然現象を切り取ることのできる、そんなプロダクトをデザインできないかと考えました。
人は、頑張る時間も、頑張らない時間も、必要です。日中、燦燦と輝く太陽も、夕方には少しずつ優しい茜色へと変わり、地平線へ沈み、夜は休みます。人も、同じ。
そんな私自身と同じように忙しい現代の中で、心の余白を増やす時間を取れていない方に、YukageのINCENSE LIGHTは、お使いいただきたいと考えております。INCENSE LIGHTの見える香りに、意味はありません。タクシーの到着時刻のように、あなたにとって意味があるものではありません。見える香りは、ただ、あなたの側でゆっくり移ろい、香りと余白を届けます。余白によって、今まで見過ごしていた大切なことに気づいたり、近くの誰かに優しくなれるかもしれません。
深く呼吸をして、ゆっくり、
心と身体のリズムを揃えていく。
その時間を通じて、忙しい人の心を元に戻す。
そのために、INCENSE LIGHTは生まれました。
末永く、よろしくお願いいたします。
---- Yukage